十種香のはなし

十種香の段

十種香(じっしゅこう)

 浄瑠璃や歌舞伎に「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅっしこう)」という演目があり、この演目の四段目に「十種香(じっしゅこう)」の場があります。上杉謙信の娘である八重垣姫(やえがきひめ)が、武田信玄の息子である勝頼に情熱的な恋心を見せる物語です。(※登場人物には実在の人物も出てきますが、一部史実とは異なる点ご注意ください。)

 ご存知のとおり、信玄と謙信は対立しあっていました。足利将軍はこの両者の不和を解消させるために、勝頼と八重垣姫を婚約させます。ところが将軍は何者かの手によって暗殺されてしまうのです。将軍暗殺の疑いは武田家と上杉家の両家にかかります。両家は犯人捜しを命じられ、3年のうちに犯人を見つけ出すことができなければ、2人の息子景勝と勝頼の首を差し出すことになります。

 しかし、両家は期限までに犯人を見つけ出すことはできませんでした。ついに勝頼は切腹を命じられてしまうのです。愛する勝頼が死んだという報告を受けた八重垣姫は、嘆き悲しみます。八重垣姫は勝頼の絵姿に向かい、十種香を焚いて読経する日々を過ごします。

 「十種香」は、白檀・沈香・零陵(れいりょう)・甘松(かんしょう)・蘇合(そごう)・薫陸(くんろく)・白膠(はっこう)・鶏舌(けいぜつ)・ 鬱金(うこん)・青木(せいぼく)の10種類の香から成ります。

 本来、十種香は組香(これらのお香を聞いて、その香りが何なのかを当てる遊び)で用いられるのですが、おそらく八重垣姫は、罪人として裁かれ、表立って供養ができない勝頼のため、手元にある香道具を用いて冥福を祈ったのです。また、十種香の香りとその煙に、八重垣姫は「勝頼に会いたい」という切なる思いを込めたのかも知れません。
 いずれにせよ、香煙を通じて思いを伝えようとする美しい姿が表現されているように思います。

 ちなみに、切腹させられた勝頼は実は偽者で、本物の勝頼は花作り(庭師)として世を忍んでいたのです。やがてそのことを八重垣姫も父謙信も知ることになります。父謙信は勝頼を殺そうと刺客を送り、八重垣姫は父を裏切ってでも勝頼を助けようとします。そして、物語は「奥庭狐火」の場へと続きます。

 さて、淡路島は浄瑠璃でも有名です。淡路人形浄瑠璃は、500年続く伝統芸能です。また、もともと「本朝廿四孝」は浄瑠璃のために竹本半二らが脚本を書いたものでもあります。この演目に限らず、機会があれば是非、淡路人形浄瑠璃をご体験ください。

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